蒼い魚

この魚は勢いのある作者だとわかる、老境の作者ではこの色にはならないと評して下さった方がありました。すでに若くはないが壮年には違いない。論語ではないが「七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず」とはなれまいが、そのころにはまた同じ構図で描いてみよう。 魚には、沢山の感情が湧く。その一は、嫁ぎ先に小姑が多かった母が盆に実家に帰った際、外孫の私たちに元教育長の祖父はにこにことやさしかった。大家族の家からそこへ里帰りした母の安堵感、やさしい婆は夜の夏祭りにそなえてわくわくした気持ちを団扇であおいで添い寝をしてくれた。ある日、晩ご飯で、私の大好きな煮魚、弟は当時は魚が嫌い、そちらの方が大きい。「そっちががいい」と。「食い物に文句を抜かすな」祖父の鉄拳を食らった。祖父に叱られたのはその一回限り。
 私は、ずっと忘れたことはない。子供の頃から魚の肝は苦いがうまいと思っている。