湖西線 永原あたり
一瞬の映像を描く 湖西線の車中で
 湖西線の特急車の車中。「うん。今年は雪がまだ残っているな。嶺南のあたりにまで」本を読みながら、時々車窓に眼をやる。
 トンネルを抜けた。永原あたりで、奥琵琶の突端に向けて、田んぼの中を、まっすぐに用水路らしき川が走る光景に出くわした。
 本の裏表紙をに、持っていたラインマーカーで、記憶が薄れぬうちに迷いなく描き込んだ。
 隣席の女性が、なにやら、話しかけてこられた。固形水彩絵の具のパレットを弁当箱のように開けて、水筆で色を溶かして、濡らす。
 もう、あの風景に戻ることはできない。「水筆は、中に水が入っていますから、押さえて、溶かして塗る。」「描きたいとき、こう見えたからこう描く。」誰でも、できますよ。